各種メディアに紹介された「山崎農園」を紹介します。
   1998年 地域新聞1面





★ユリ作りに心を込めて★

 「ビニールハウスが風で揺れる音を聞くと背中がざわっと落ち着かないですね」
大きな花が風に揺れている姿から、ゆれる→ゆらり→「ゆり」という名ができたと言う説がある。
近年人気の「カサブランカ」というゆりを中心に栽培している山崎さんにとっては風は大敵だ。
ハウスの中は17℃から20℃に保たれている。
風によってビニールの劣化は早くなるし、
突風でビニールが破れでもしたら手塩にかけた花はだめになってしまうからだ。

「父がなくなった年、ハウス1つ分のカサブランカ約一万本をだめにしたことがあります。
さあ、母の日用に出荷するぞという2日前の事でした」

突風から一時的に停電をおこしたことに気が付かないままハウスの扉を開けたときのやり切れなさ!
5ヶ月かけて咲くばかりだった花が赤茶けて倒れている。

「泣きながら、狂ったようにカマを振り回したみたいです」と笑顔で話す妻の操さん。
二人は佐倉市で最も若い専業農家だ。
地味で大変な農業を職業に選ぶ時、迷いませんでしたか。
「誰もが大学に行く時代でしたけれど、親父が夢を持って仕事をしていたのが感じられましたから。人はどんな偉いこと言ったって、
自然にはかなわないだぞと。自然から学ぶことって多いこの仕事が好きです」
市場に出荷する以外に山崎農園では市価より安く直売もしている。球根を一つ一つ手で植え付けて、きれいに咲くようにと毎日注文を受けてから切り取る。
その花言葉は「純潔」。堅いつぼみが開くとき、甘い香りが部屋中に漂った。カサブランカをあなたに。(亮)

(地域新聞記事より転載)

1998年2月 東京新聞(後半)




日本が原産地のユリを大別すると、鉄砲ユリ、透かしユリ、オリエンタル・ハイブリッドの三種類になる。栽培方法は難しく、三種類はもちろん、同じオリエンタルでも早生(わせ)と晩生(おくて)をハウスで一緒に栽培するのは困難だという。

「ユリは栽培技術があまりにも難しいので、どうしても同じ系列を栽培する傾向があります。ユリを育てるポイントは温度、水、光線です。なかでも温度管理が大切で、失敗すると間延びしたり、柔らかくなったり、花が小さくなったりします」と話すのは、佐倉市でカサブランカを中心に約10種類のユリを育てる山崎新市(43)、操(38)さん夫妻だ。

ユリの商品価値は、全体的なボリューム感、軸の堅さ、花の大きさ、葉の大きさと張り具合などを総合したもので決まる。ただ、ユリの商品価値も時代とともに変わりつつあるようだ。

少し前までは、葉を適度に小さくして、節の間隔を締め、スタイルを良くし、ビシッとした生花的感覚が主流だった。ところが、最近はフラワーアレンジメント感覚の投げ込みスタイルが主流となりボリューム感や開放感が求められるようになった。




山崎農園のカサブランカは純白の超巨大輪で、花びらが肉厚なので日持ちがよい。冬だったら条件にもよるが、15−30日くらい花が楽しめる。「市場の人によると、お客さんから”カサブランカが欲しい”と注文が来たときは、カサブランカでなければだめだそうです。

高価なユリといえばカサブランカというイメージが完全に定着しているようです。名前だけが独り歩きしています。最近はかなりカサブランカに似た品種が出回っていますが、カサブランカの牙城(がじょう)を崩せません」と。カサブランカが完全にユリの代名詞になった経緯を語る山崎さん。

山崎農園では、カサブランカは年二作。真夏は高温で出来が悪くなると、新潟や東北などの高冷地から大量に首都圏に出荷されるため、あまり作らないという。

「7,8月は温度が高いため、根が張るよりも、上に急激に伸びてしまいます。また、高温のため蒸散(水分が葉や茎の表面から水蒸気となって発散すること)のバランスが悪いので、葉が焼けてしまします。そのため軸が細く、輪付きも悪い商品価値のないようなユリができてしまいます」と、夏の栽培はお手上げと話す山崎さん。

栽培技術が難しいユリに数年前から新たな問題が起こった。それは米や野菜作りから花き栽培に転換する農家が増加し、なかには一種類だけのユリを大規模に生産する農家が増えてきたことだ。

一種類のユリを大量に生産すると、需要と供給のバランスが崩れて必ず値崩れが起きる。下手をすると、農家自身が自分の首をしめるという結果を招く恐れがある。

「あまり単品で量を作るとさばくのが大変です。いろんな種類を作ると、飽きませんし、直売にも有効です。カサブランカ以外にもピンク系、赤系に捨てがたいものがありますね。」

良い品質のユリの花は健康なユリ作りから始まる。健康なユリは、人間でいう自然治癒力がある。たとえウイルスが侵入しても、自分でマスクしてしまう(ウイルスを包み込むこと)ので、商品価値のあるユリの花を咲かすことができるという。

健康なユリを作るためには、窒素、リン酸、カリウム以外に微量養素が必要になる。しかし、化学肥料では対応できないので、有機質肥料がどうして欠かせない。

「一番よい方法はたい肥を作ることです。しかし、昔ながらのたい肥を作るのには、ワラはあるが、山の落ち葉を持ってくることは現状では不可能です。先祖が行なっていたのは『山一町(約1ヘクタール)、畑一町、田んぼ一町』と呼ばれるものです。これは山、畑、田が有機的に結び付き、たい肥を循環し輪作する方法で、もっとも普遍的な農業形態です。これだと病害虫の大量発生はまず起きません」と話す山崎さん。

山崎さん日持ちのするユリは、市価より格安で直売されている。問い合わせ・連絡は電話043−487−4361、ファックス043−487−2287へ。

1998年2月 千葉の農業最前線から

「千葉の農業 最前線から」 切り花の女王 カサブランカにこだわる・前半
色とりどりに咲いた花はみていても美しいが、仕事や人間関係で何かとストレスの多い現代人の疲れた心をやさしく癒してくれる。なかでも花の豪華さ、あでやかさ、気品のある甘い香りで根強い人気を保っているのが、ユリの代名詞ともいえるカサブランカ。このカサブランカは何と日本のヤマユリをベースに交配を重ねてつくられたという。

あまり知られていないのがもともとユリの原産地は日本。ヤマユリ、カノコユリ、タモトユリ、オトメユリなどが欧米で品種改良され、日本に逆輸入された。

ユリを大別すると、鉄砲ユリ、透かしユリ、オリエンタル・ハイブリッドの三つのタイプに分けられる。透かしユリは、日本各地に分布する岩ユリやミヤマ透かしユリを複雑に交配してつくられた日本独特のユリ。この日本の透かしユリがヨーロッパに大量に輸出されて育種ブームが起こり、多くのヨーロッパ交配種が生まれた。

オリエンタル・ハイブリッド系のユリの基本は作ユリ、ヤマユリ、カノコユリなどの交配で、すべて日本原種のやや性質の弱いユリからできている。




「直径20cm以上に咲く大きな花と気品のある香りでユリの女王を呼ばれるカサブランカや、品の良いソフトピンクのルレーブなどのオリエンタル・ハイブリッドの登場で、ユリは新たな切り花の需要を掘り起こしました。今やアレンジや高価な花束にユリは欠かせません」と話すのは、佐倉市でカサブランカを中心にユリ栽培を営む山崎新市(43)、操(38)さん夫妻。

山崎さんのお父さんは、ユリの栽培に関しては県内でもパイオニア的な存在。昭和25年からユリの栽培を手がけてきた。「ユリの栽培を手伝うことに何の抵抗もありませんでした」という山崎さんは農業高校卒業後、すぐに就農した。

「私が就農したころはガーベラ、スターチス、ペレッチなど、いろいろな花が出始めました。ユリもオリエンタル・ハイブリッドが出回り始めましたが、球根代が高いため少しずつしかつくれませんでした。その後、徐々に増やし、現在ではほとんどがオリエンタル系です」

オリエンタルの球根代は200〜300円。なかにはもっと高いものもあるという。もともとオリエンタルはヤマユリなので、冷蔵処理に時間がかかるため、冬場は生産ができなかった。ところが5,6年前から、1年間マイナス2度に球根を凍らせておく氷温冷蔵の技術が確立されたため、冬場でも栽培できるようになった。しかし、ただでさえ高い球根代に氷温冷蔵代までが加わってしまった。

ユリの栽培は温度管理が難しいため鉄砲、透かし、オリエンタルなどを同じハウスでは育てられないという。例えば、オリエンタルのハウスの温度を合わせると、透かしユリには高温すぎてします。逆に透かしユリに合わせると、オリエンタルには温度が足りなくなってします。無理に同時栽培を行なうと必ず障害が発生する。そこでどうしても同じものを植え付けることになる。

「同じオリエンタルでも早生(わせ)と晩生(おくて)を一緒に栽培するのは難しいです。ピンク系は早いですが、純白の大輪のカサブランカは遅いですね。ですから、一本の花 ができる温度(暖房の油代)は当然違ってきます。あまりにも栽培技術が難しいので、同じ系統のものをつくるようになります」と、苦労を語る山崎さん。

山崎さんは、切りたてのカサブランカ市価よりも格安で販売している。問い合わせは、電話043−487−4361、ファックス043−487−2287へ。

1992年3月 雑誌「家の光」にて紹介



記事「さわやかカップル」

※「家の光」:JAの前身、産業組合により創刊。70年以上もの歴史のある家庭雑誌。
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